トイレの個室

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ちょぼらうにょぽみの声優イレブンの戦術的解釈

オタクはね、自分の好きな声優でサッカーチームを作るの!

サッカーを愛する者はベストイレブンを選びたがる。11人好きな選手を選んであれこれ考えながらピッチに並べる時間は極上の幸福感を味わせてくれるが、そこでシステムとして3バックを採用する人は少なくない。というのも、FWやMFのポジションの選手は魅力的であり、その選手をより多く選びたいという欲求を誰もが抱くからだ。ちょぼらうにょぽみもまた、この欲求に取り憑かれた者の一人である。

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あいまいみー』第3期で発表された声優イレブン

ちょぼらうにょぽみが選出した選手を見てみるとその3バックの特異さには驚きを隠せない。名実共に日本屈指のディフェンダーである茅野愛衣は身長に恵まれないながらも、圧倒的な戦術眼とリーダーシップでディフェンスラインを統率するその様は往年のフランコ・バレージを彷彿とさせる。その両脇を固める悠木碧竹達彩奈は純正のCBとは言えないだろう。むしろボールの扱いに長けたフィリップ・ラームやジョシュア・キミッヒのようなSBである彼女らを3バックに同時に起用することはちょぼらう監督の明確な意図が感じられる。このチームはボールを保持してボールを失ったらすぐにプレッシャーをかけて即時奪回する、ペップ・グアルディオラが目指すようなポジショナルプレーを原則として掲げつつ、それをさらに攻撃的に発展させようとしている。

現代サッカーにおいてボール保持をする上でGKの能力はとても大きく関わる。エデルソン・モライスやマヌエル・ノイアーとの類似性の高い井口裕香はこのチームを最後尾から支えるGKとして必要な条件を満たしている。相手のプレッシャーを受けても味方に確実なパスを出せる足元の技術が彼女の特徴だ。また、積極的な飛び出しで相手の攻撃を阻むプレーエリアの広さにも定評がある。前線からプレッシングをかけるこのチームは最終ラインの裏に大きなスペースが常に空いている。井口がこのチームの戦術を支えていることは明らかである。

このチームの魅力はなんと言っても世界的なタレントを多く擁する中盤だ。まずは花澤香菜。以前からその類稀なる才能は認められていたが、ここ数シーズンの成長によって狭いスペースでボールを持っても良し、カウンターの局面も1人でボールをゴール前まで運べる、長短の正確なパスで試合の展開を握る、とケヴィン・デ・ブライネもびっくりな完成度を誇る花澤はいまやバロンドール獲得を最も期待されている選手の一人だ。

花澤と2ボランチを形成する内田彩は決して足元の技術が高いとは言えないが、ちょぼらうがガットゥーゾと評するようにその献身的な守備は随一である。相手のパスをカットしたりドリブルに食らいついてボールを奪い取る様子はまさに"闘犬"であり、内田彩のピッチを縦横無尽に走るスタミナが尽きることはなく「ピッチに内田彩が3人いる」とまで言われるほどだ。

もう一人の内田、内田真礼は典型的なファンタジスタだ。10番を背負う彼女が前向きにボールを持てば、ゴールが生まれるという期待感を観客の私たちに与える。本人はサッカーよりも野球の方が好きなのではないかという噂や同じくプロ選手である弟との関係などピッチ外の話題が絶えない内田真礼だが、監督からは「たそ」という愛称で呼ばれていて両者の関係性の良さが伺える。

右のWBの本渡楓は11人の中で最も若いニュースターである。最近の活躍で2018年度の新人賞を受賞し注目を浴びる本渡だが、ちょぼらうにょぽみは何年も前から監視していた。このベストイレブンの選出自体2017年のものであり(何故2019年の今これについて書いているのか)、ちょぼらうが先見の明を持つことを証明している。まだプレーには荒削りな印象も受けるが、今後の成長に期待できる選手だ。

左WBの佐倉綾音はこのチームの戦術上最も重要な選手であり、監督に最も愛されている選手だ。スピード、テクニック、パワーを兼ね備え、ゴールとアシストを量産する佐倉はまさに左サイドの制圧者である。例えるなら怪我をしないバンジャミン・メンディ、あるいはトッテナム期のギャレス・ベイルのようだ。後述するか、佐倉のこの圧倒的な「個」がこのチームの戦術そのものである。

前線にはインザーギにも例えられる大坪由佳とチームのエース・上坂すみれの2人を並べる。このユニットは上手く役割が分担されている。大坪は裏抜けを狙ったりサイドに流れてボールを受けたり、ピッチを縦にも横にも積極的に走る。対して上坂は基本的に自分のポジションを離れず、ボールを引き出してポストプレーで味方を活かすかターンして前向きに自分で仕掛ける。しかし、上坂はロシアリーグでのプレー経験もあってか共産性の高さがプレーに影響しているのでは、と指摘されている。ムラのあるエースというのは一つのロマンではあるが…

 

選出された11人を見てきたが、実際このチームはどのようにプレーするだろうか。先述の通り基本はボール保持を第一に考える。ビルドアップの局面ではGKと3バックで相手のプレッシャーをいなしながらボールを前進させる。特に両サイドのCBの悠木と竹達はパス能力の高さもありながらドリブル能力に長け、彼女らがドリブルで運ぶシーンは何度も見られる。相手がGKまでプラスに行かない場合は3バックと花澤の4人で菱形を作りボールを回しながら相手のファーストラインを超えていく。

ボールを相手陣地まで運んだ後はパスを回しながら縦パスを通すための相手ブロックの隙間を探す。両WBはタッチラインいっぱいまで開き相手ディフェンスの距離感を広げる。この局面で特徴的なのは、左右で非対称なポジションを取ることだ。トップ下の内田真礼が右サイドに流れ、本渡と花澤とトライアングルを形成する。時にはCBの悠木が上がってきたり大坪が前線から流れてきたり、とにかく右サイドに人を密集させる。狭いスペースでも自由にボールを扱える内田真礼と花澤のおかげで密集地帯であっても相手にとってはボールを奪うことは容易ではない。そうして右サイドに人を集めると必然的に左サイドに広大なスペースができる。スペース的にも時間的にも余裕が与えられた佐倉綾音は誰にも止められない。サイドチェンジでボールを受けた佐倉はカットインからのシュート、縦にドリブルしてからクロスなど自身の高い能力を発揮する。また、ドリブルが難しければトップの上坂とのワンツーで局面を打開する。佐倉と正対するディフェンダーはいくつもの選択肢に迫られ、これまで数多くの者が佐倉にやられてきた。

ディフェンスに関しては何度も言ってきたようにハイプレスが特徴だ。基本的に2トップで相手CBにパスコースを限定しながらプレスしWBが相手のSBまで出かけてプレッシャーをかける。相手チームがアンカーを置くシステムの場合は内田真礼がほとんどマンツーマンで対処する。中盤にはボール奪取能力が高い内田彩がいるので、前線の選手はその場でボールを奪えなくとも相手が苦し紛れに出したパスを予測していた内田彩が回収してくれる。

攻撃的過ぎるディフェンスラインはボール保持の場面では大きな利益を生むが、どんなチームも試合中常にボールを支配できるわけではなく、守備の場面では弱点となる。3人とも身長が低く、決してフィジカル的に優れているとはいえないのでロングボールやクロスを弾き返すことが難しい。また、全体を見てもフィールドプレイヤーの平均身長が155.6cm(wiki調べ)、FWの2人以外の平均は153.75cmと20代の日本女性の平均身長157.5cmと比べると低い(ちなみに2016年のなでしこジャパンの平均身長は162.8cm)。ボール保持を得意とするチームはセットプレーや空中戦に弱いという傾向があるが、このチームはその顕著な例である。

また、過激な采配が話題を呼ぶちょぼらうにょぽみ監督はビハインドで迎える後半35分あたりで突如それまで大事にしていたボールを放り捨てる。両WBを前線まで上げて相手の最終ラインに人を4,5人並べ、そこにボールを蹴りこむというアントニオ・コンテが好む手法を使う。この時ロングボールの供給源である花澤は最終ライン近くまで落ちるので、中盤は内田彩一人に任されることになる。ちょぼらうはこのようなリスキーでチームの哲学にそぐわないような方法を採用することを恥じない。周りがどんなに批判しようと、処女厨でありながら自身は非処女であるという非論理の権化のような存在である彼女の耳にはそれが届くことはない。

 

以上がちょぼらうにょぽみ選出の声優イレブンの特徴である。声優イレブン界隈のパイオニアであるちょぼらう氏の功績は非常に大きいにも関わらず、日頃の奇妙な言動のせいかそれが論じられることはこれまで少なかった。これを見たアナタも自分の声優イレブンを作ってみてはいかがだろうか。