モンブランが好きだった
子どもの頃、実家で誕生日や記念日に買ってきたケーキの詰め合わせの中から私はいつもモンブランを選んだ。モンブランに強い憧れを抱き異常なほどハマっていた時期があった。
それを親は覚えていて、今でもケーキを買うときは私のためにと必ずモンブランを入れてくる。私はあの頃のモンブランへの情熱を既に失ったので、困る。
私はモンブランを選ぶことを期待されてケーキに手を伸ばす。そこに4つケーキがあっても、私にとってはモンブランかモンブラン以外かの二択だ。期待に従って、あるいは、期待に反して手に取ったケーキの味はいずれにせよ十分に楽しめない。
このことで親に不満を言いたくなる気持ちもあったが、ことの原因は私がコミュニケーションで手を抜いてきたことにあると気づいて何も言えなくなった。
きっと、私がモンブランを素直に美味しく頂くことはもうないだろう。